「脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの招待」、中野信子、幻冬舎新書、2014年1月発行。
概要
食欲や性欲などの人間の欲求を満たした時に分泌されるのが神経物質ドーパミンである。ギャンブル、アルコール、タバコ、ゲームをしているときも同じようにドーパミンが分泌されている。何かを達成して他人から褒められている時、評価されているときもドーパミンが脳内で出ている。ドーパミンが働く限り人は何かを達成することに快楽を感じ、それに向かって努力することができる。
ネズミの脳内にある快楽を感じる部分を刺激するレバーをネズミに渡したら、ネズミは1時間に7000回もレバーを引いた。空腹な状態や発情期のネズミを近くにおいてもレバーを引き続けたため、快楽は食欲や性欲を上回ると考えられる。人間にも同様の実験をしたところ同じような反応が見られ、報酬系の存在が発見された。報酬系を活性化させると快楽を得る。
報酬系を語る上で大事なのがA10と呼ばれる神経である。A10はVTA(腹側被蓋野)から伸びて脳の各部へ伸びる。ドーパミンを受け取るのは、前頭前野、海馬、扁桃体、側坐核などである。特に側坐核(そくざかく)がドーパミンを受け取ることで快楽が生じる。
1度発生した快楽は記憶を司る海馬によって記憶され、美味しいご飯を食べた後にまた食べたくなるように、同じような快楽を求めるようになる。依存症の正体は、ドーパミンと抑制性のセロトニンのバランスが崩れるのが原因だと考えられる。報酬系にはGABA神経というブレーキがかかっているが、アルコールはGABA神経を抑制しドーパミンをたっぷりと分泌させるため中毒になる。
他人に褒められたり評価されることで人は社会的報酬を得る。社会的報酬と金銭的報酬を受けるときに脳の同じ部位が反応している。年収が500万〜900万の間であれば幸福度は同じである。人は金銭的報酬の額ではなく、他人と比較した順位で幸福を感じる。お金を稼いで金持ちグループに属せたとしても、その中での順位が低ければ幸福を感じることはできない。身の丈に合った生活を送るのが幸せを感じるための方法かもしれない。
感想
美味しいものを食べている時、セックスしている時、アルコールを飲んでいる時、覚せい剤を使用している時、
他人に褒められた時、受験勉強をしている時、頭の中ではドーパミンが働いている。
アルコールを飲んでいるのと受験勉強をすることは全く違うことだが、脳内では同じ快楽物質が出現している。
何かを達成することに快楽を感じる人もいれば、アルコールに溺れてしまう人もいる。
同じ快楽物質だが、行き先は180度違う。
私は英会話、ブログ、筋トレ、早起き、読書が好きだ。
友達に「努力をするのが好きなんだね」と言われるが、何か目標を設定して取り組むのは好きだ。
ドーパミンはタバコ、アルコール、覚せい剤、ギャンブルに依存するための物質であってはならない。
家を建てる、道を作る、農場を作る、などの目標を立ててそれに向かって努力、達成し快楽を得る
ためのものだ。