吉野家の経済学

吉野家といえば牛丼。私たちの生活の中に当たり前になっている牛丼だが、この本には私たちの知らない吉野家の舞台裏が存在する。

例えばお米。吉野家では、丼と定食で求めるお米のクオリティは違う。定食の場合、そのまま食べるので求めるクオリティが丼よりも高いのだ。そこで、炊いた後の経過時間で丼用にするか定食用にするか調整している。

タレにもこだわりがある。1時間に3回煮るのが、2時間で1回煮るのかではタレの濃度に大きな違いがでる。よって、客数が少ないお店だとタレの濃度が均一にできないため、客数が少ないような場所ではお店は開かないそうだ。

食材の品質にもこだわりが見える。吉野家ではコメも肉もタレもローマテリアル(1時原材料)を管理・コントロールしている。肉は産地や品種が分かっているUSビーフを使っていて、アメリカからブロック単位で輸入。国内の工場でスライスして、各店舗に配達している。食品偽装になり得ない仕組みを採用している。

パート・アルバイトの話も興味深かった。パートやアルバイトは1つのお店に勤務するわけではなく、7〜8店舗を1ユニットとみなしユニットの中で働く仕組みだ。1店舗で欠員が出ても同じユニットの他の店舗から人を回せるようになっている。こうすることでスケジュールの凸凹を調整できるようになっている。

肉盛りマスターになるまでに半年かかる話も面白い。肉、玉ねぎ、タレをまとめてオタマで1回で盛り付けるのだが、その技能を習得するのに半年かかるそうだ。さらにマニュアルで、スタッフの鍋から肉を盛るときの立ち位置も規定されている。

肉盛り係は肉盛りだけしているわけではなく、お客さんのいるフロアを見渡し会計やお水のお代わりを求めているお客さんを把握して声がけをすることも必要。サッカーのチームのように空いているポジションは誰かがカバーするという臨機応変な対応が求められる。

吉野家の経営面も目を見張るものがある。バブル崩壊でマイカルやそごうの大型小売店が経営難に直面する中で、吉野家は順調に経営をしてきた。吉野家は不動産を買ってビジネスを展開するのではなく、借地でビジネスをした。そうすることで、バブル崩壊後不動産価格が大幅に下がっても影響を受けず、むしろさらに店舗拡大ができたのだ。

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