「ぼくは会社員という生き方に絶望していない。」読んでみた

「ぼくは会社員という生き方に絶望していない。ただ、今の職にずっと・・・と考えると胃に穴があきそうになる。」、フミコフミオ、KADOKAWA、読んでみました。

池袋のとある本屋のビジネスコーナーをふらふらしていたところこの本を発見した。ビジネス書というと、マネージメント、成功する方法、プロの働き方、などのどっかの成功した社長が抽象的な言葉を頻発し成功を自慢するようなつまらん本が多い。しかし、本書は成功の仕方ではなく、人生で挫折しがちな仕事や家庭の中で起こるトラブルを面白おかしく話している。もともとはてなブログで掲載していた記事をまとめたものだ。

著者は40代のサラリーマン。食品の営業をしている部長だ。この人の身の回りには面白い人物がたくさん登場する。終業間際に爆弾を投げてくるボンバーマン部下、自分を汚物のように扱ってくる妻、仕事をしているフリすらせずに時々奇声を発する上司、どうしても他人の行動が気になるお局社員など。

読んでいて思うのは著者の語彙力が多く、様々な表現を用いて事象を説明している。例えば、結婚のことをチワワと表現しており、毎日散歩や餌やりをしないといけない手が掛かるものと書いている。よくもまぁこんな巧みな表現で身の回りにある出来事を表現できるな、と感心するほどだ。

この本では、一般的なビジネス書にある「成功したければこうしなさい」と説明する形ではなく、日頃著者が経験したことや考えをそのまま真空パックしたような、いわゆる日記である。サラリーマンで有る限り、上司や部下の言動で胃に穴が空きそうになるし、家に帰れば妻が自分を生ゴミのような扱いをしてくる。ごくごく普通のサラリーマンの物語だ。部長だからといって金持ちな雰囲気は全く見せずに、飲み会がある時はお昼ご飯がアンパンのみだったりする。消費税増税によってディズニーランドに行くのをやめるのか、ランチに食べているからあげ君を控えるべきか検討している姿はまさに庶民。

スティーブ・ジョブズのような成功者の話を綴った本は山ほどあるが、1サラリーマンが日々の日常を書いた本は世の中には少ない。匿名化された庶民がブログという名の情報発信ツールで日々の悩みや考えを書いて本を出したことに私は希望をもらった。個人的に一般市民が情報発信することはとても大事だと思う。就職や仕事、家庭における悩みは千差万別であり、その人の人生を構成するオリジナルストーリーだ。日本に1億人いたら1億人分のストーリーがある。それをブログという形で発信することで、その人の物語をネットに永久保存できる。将来的には、履歴書や名刺はなくなり、「私の経歴?ブログを見てください。」みたいな世界が訪れたら素敵だと思っている。

本書が伝えたいのは人生逆転の方法や勝ち組になるための方法ではない。人生において負けない、つまり勝ちはしないけどゲームオーバーにはならない。そんな生き方。失敗しても言い訳を作り負けと認めない生き方だ。自分が負けていないと思っていれば負けていない。役満は狙わずにソコソコの人生を生きていくための方法を教えてくれる。