デフレの正体 経済は人口の波で動く

概要

愛知県東海市の太田川駅前は、ファミレス、コンビニ、マンションがない。好景気だったが、駅前の地権者が豊かで土地を活用しようとしなかったからである。

2008年に日本人の金融資産は110兆円、7%も減少、個人消費も冷え込むと言われていた。しかし、ドルベースで考えると1-2割の円高が進んだため資産は増えた。

21世紀に入ったころ(2000~)から日本の貿易黒字が減少傾向になっているのは嘘。2001年には8兆円、2007年には12兆円の貿易黒字だった。

日本の貿易は世界同時不況化でも黒字になる。輸入のほとんどは売上に連動して上下する変動費であるため、貿易赤字になりにくい構造になっている。過去20年間、平均して10兆円の貿易黒字を達成してきた。

稼いだ貿易黒字は輸出企業とその株主の財布に集中している。彼らは貿易黒字を海外の企業に再投資している。日本は海外にモノを売るだけでなく、お金を貸すのも上手なのだ。

日本に対して貿易黒字だった国は、フランス、イタリア、スイスのみ。3か国はブランドの食料品や繊維で稼いでいる。

中国が栄えれば栄えるほど日本は儲かる。GDPの合計額では人口が10倍も多い中国が日本を追い抜くと予想される。日本の方がまだGDPが多いということは、一人当たりのGDPに日中で10倍の差がついている。

日本は韓国、台湾からも中国と同じ3兆円前後の貿易黒字だ。

バブル以降(1990年以降)の16年間を見ると、個人所得とモノ消費を見る限り、青森の方が首都圏よりもマシな水準で推移している。世間で言われる地域間格差はない。

内需不振は現役世代(生産年齢人口:15歳―64歳)の減少によって起きる。

首都圏では2000-05年の間で65歳以上が118万人も増えたが、所得があっても消費しない高齢者が増えても需要は増えない。30代後半生まれの人は高度成長期に首都圏や愛知県に中卒の卵として流れ込み、2000-05年の間に65歳を超えたのが原因。一方で、沖縄戦争で30代後半生まれの1/3の人が亡くなったため、沖縄では現役世代が増え、個人所得とモノ消費が増えた。

40年代後半に生まれた団塊世代が65歳で退職する2010-15年には更に高齢者が激増すると考えられる。

1940代後半に生まれた団塊の世代が高校を卒業し働きだした1965年-70年にいざなぎ景気が発生。働きだす若者数の増加により、需要と供給が共に拡大し雇用が増えた。

戦後直後の1945-50年には出生率は4以上だったが、1955年-1964年(高度成長期)には出生率が2になり出生者数が減った。1965-74年、出生率は2であったが団塊世代が親の世代になり団塊ジュニアが生まれたため出生者数は増えた。

少子化が起きる2つの原因は親の数の減少と出生率の低下。日本の少子化は親の数が減っているのが原因で、出生率が上がっても少子化は改善されづらい。

80年代後半、団塊世代が40歳を超えつつあり団塊ジュニアが10代後半になったころ、住宅の過剰供給(住宅バブル)が起きた。

今後5年で65歳を超える団塊世代は1千万人だが、日本在住の外国人は230万人しかいない。外国人労働者受け入れは解決策にならない。外国人観光客を増やすことは内需の拡大になる。

日本人女性の就労率45%は世界的に見てもずいぶん低い水準。東京都は1番出生率が低く女性の就労率も低い。女性が働いている県ほど子供が生まれている。ダブルインカムでないと子供を育てるのが難しいのが理由だと考えられる。

感想

景気は生産年齢人口の波に連動して動く、というのがこの本の趣旨だ。

生産年齢人口が増えれば個人の所得とモノの消費が増えて景気は良くなる。

逆に、生産年齢人口が減れば個人の消費が落ち込み景気が悪くなる。

ではどうすればよいのか?という問いかけに対して、本書では

  1. 高齢者がお金を持っていても使わないため若者にお金を移管する
  2. 会社が若者の給料を増やす
  3. 女性が働く環境を作る

と提言している。

また、日本の貿易が如何に強いかが述べられている。なにせ日本の貿易赤字は世界の中でも3か国にしか発生しておらず、そのほかの国では貿易黒字が続いているのである。

しかも中国、韓国、台湾からは毎年3兆円ほどが流れ込んできている。中国経済が成長することで日本の貿易黒字はさらに拡大すると言われている。

そんなに利益をだしている日本のお金はどこにあるのか?と疑問に思うが、どうやら高齢者がため込んでいるらしい。

たしかに1400兆円もある高齢者のタンス預金の1%でも若者に回れば消費が増えて景気が良くなりそうだ。

私は経済に詳しくないが、景気を良くするには収入を増やして消費をガンガンするのがポイントのようだ。

金は天下の周りモノ、江戸時代の商人はそう考えていたらしいが、400年も前の時代から経済を回すための考え方があったことに驚いた。

そういえば某大臣が老後のために2000万貯金しろと高齢者に言っていたが、そんなことをしたらタンス預金ばかり増えて若者にお金が回らなくなってしまうではないか、と思う。

日本の経済を知る上でこの本は大きな手助けになった。良書である。

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